無痛分娩
*当院が行う無痛分娩
当院で行う予定の無痛分娩は、背中から注射をして硬膜外カテーテルを挿入して行う硬膜外麻酔による下半身麻酔で、お産の痛みを和らげます。この方法は、海外では最も一般的な産痛緩和の方法です。
2023年度は原則、合併症のない経産婦のみを対象とし、計画分娩とさせていただいております。
まず、手術室で硬膜外カテーテルの留置を行います。その後、陣痛室あるいは分娩室へ移動し、陣痛促進剤を使用して陣痛を人工的に起こします。その際、安全のため、心電図、血圧計、胎児心拍陣痛モニターを装着して過ごします。
有効な陣痛が生じ、産痛が強くなったら、麻酔科医が硬膜外カテーテルから薬剤を投与し、産痛をやわらげます。麻酔の効果が安定した後は、機械(以後PCAポンプ)を使ってお産が終わるまで麻酔薬の注入を続けます。PCAポンプは薬剤注入ボタンがついており、産婦さんが自分で麻酔薬を追加注入することも可能で、安全に使用できるよう設定されています。
*対象者
- 外来で産科および麻酔科医師よる説明を受け、同意を得られた無痛分娩希望の経産妊婦(原則分娩途中からの希望は不可)。
- 医師が医学的に必要と判断した妊婦。
- 非妊時体重から15kg以上の体重増加がある妊婦、もしくは非妊時BMI25~30の妊婦については、安全に硬膜外カテーテルを挿入することが難しいと判断する場合があり、無痛分娩ができない可能性があります。最終的に妊娠34週頃に医師が判断することとしています。
*無痛分娩のメリット
- 陣痛の痛みを和らげることができます。
- 陣痛の痛みが少ないことで、リラックスして分娩することができます。
- 血圧が高めの妊婦さんの血圧上昇を抑えることができます。
- 産後の回復が早いです。
*無痛分娩の副作用・不具合
産痛が抑えられることで生じる副作用と、非常にまれにおこり得る合併症があります。
〈よくおこる副作用〉
- 麻酔の影響による低血圧です。モニターを使用しながら、注意深く観察致しますので、その都度早くに治療を行います。
- 足の感覚が鈍くなり、力が入りにくくなることがあります。産痛を感じる神経と足の運動や感覚をつかさどる神経が同じ範囲内にあるので、硬膜外麻酔の影響を受けやすいですが、その程度は妊婦さんによってさまざまで、程度に応じて薬剤を調整します。
- 排尿感が乏しくなったり、尿が出しにくくなることがあります。その際は、尿道に細い管を入れて尿を出しますが、麻酔が効いているため痛くないことがほとんどです。
- かゆみが生じることがあります。
- 体温が上昇することがあります。
〈非常にまれな合併症〉
- 頭痛
- 高位ブロック
麻酔が広がりすぎることがあります。
- 局所麻酔中毒
血管内に局所麻酔薬が入ったり、局所麻酔薬の濃度が上がりすぎることにより生じます。
- 硬膜外膿瘍、硬膜外血腫
カテーテルを挿入する周辺部位に感染して膿が貯まったり、血の塊(血腫)を作ることがあります。
どのような医療行為でも100%安全ということはありません。一般に無痛分娩の安全性は高いと考えられていますが、事故につながったケースが、全国的に見た場合、過去に認められるようです。
*お産への影響
- 分娩時間への影響
特に子宮口が開いてから赤ちゃんが生まれるまでの時間が少し長くなる傾向があります。赤ちゃんが元気で、妊婦さんの痛みが十分に取れていれば、ある程度時間が長くなっても問題ありません。
- 吸引分娩
無痛分娩を行った場合には、いきむ力が少し弱くなるため、吸引分娩の確率が少し上がります。
- 帝王切開
帝王切開になる可能性は無痛分娩とそうでない分娩とでは変わらないと言われています。
*注意事項
- 事前に決定した日時に入院していただき、陣痛誘発剤を使用して人工的に陣痛を起こす計画分娩を行います。夜間や土日祝日は対応しておりません。
- 硬膜外麻酔料(薬剤費含む)として通常の分娩料に、無痛分娩加算として8万円が加算されます。
(改めて、産前検査・入院料等の費用が発生します)
*危機対応シミュレーションの実施例
福山市民病院では産婦人科・麻酔科・小児科・手術部が合同して定期的に急変時のシミュレーションを開催しています。シミュレーション後は振り返りを行い、日々の周産期医療に活かしています。実際の超緊急帝王切開(グレードA帝王切開)においても、宣言から10分程度で胎児娩出が可能な体制を整えています。
- 2018年10月22日「グレード A 帝王切開」:産婦人科・麻酔科・小児科・手術部合同
- 2019年2月25日 「グレード A 帝王切開」:産婦人科・麻酔科・小児科・手術部合同
- 2019年11月15日 「グレード A 帝王切開」:産婦人科・麻酔科・小児科・手術部合同
- 2022年12月26日 「グレード A 帝王切開」:産婦人科・麻酔科・小児科・手術部合同